疾患情報 五十肩・肩関節周囲炎

五十肩・肩関節周囲炎

五十肩とは、文字通り50代で最も発症しやすい病気です。
レントゲンや血液検査などで異常は見当たらないものの、激しい痛み、腕を挙げることができない、夜間に痛くて眠れないなど、
日常生活に支障をきたすやっかいな病気です。

 

多くは半年から1年で自然治癒しますが、その間、痛みと運動制限のためにかなりの苦痛を強いられます。
慢性期の運動を怠ると肩の可動域が発症前と比べると狭くなることもあります。

 

五十肩は別名で凍結肩(frozen shoulder)や
疼痛性肩関節制動症(stiff and painful shoulder)と言います。
五十肩は狭義の肩関節周囲炎です。

 

五十肩は鍼灸の適応疾患です。
医師の同意を得られると、健康保険の適応が可能です。
鍼灸施術を受けると、しない場合に比べてかなり短期間で回復します。
ここでは五十肩ならびにそれ以外の広義の肩関節周囲炎の病気について解説いたします。

 

五十肩の原因

 

五十肩になる原因は、加齢による退行性変化が基となるようですが、まだはっきりとわかっていません。
しかし腕を上げた状態で長時間作業をした後に発症しやすいということは言えそうです。

 

たとえば樹木の手入れの後や、大掃除で高い場所を拭き続けた後に発症することがよくあります。
重いものを持ち上げようとした瞬間や、テニスやゴルフのスイングなどの最中に突然激痛に襲われ、
その後肩を動かすたびに痛む場合も多いようです。

 

また、無理な姿勢や打ち身などから五十肩になったという場合もあります。
これらをきっかけとして肩関節周囲の軟部組織
(上腕二頭筋長頭腱、腱板、その他の筋肉の腱、滑液包、靭帯など)の広範な炎症を起こします。

 

 

五十肩の症状

症状の特徴は以下のとおりです。
@肩周囲の自発痛、ときに強い夜間痛。
痛みは肩の前後、外側など広範囲に現れます。

 

A運動痛。
腕を前や横や後ろにあげたり振ったりするほとんどの動作で、
肩の前後あるいは外側に、筋肉の収縮による痛みやけん引痛が現れます。

 

B運動制限(拘縮)。
疼痛を伴う運動制限のため、結帯動作(手を腰の後側にもっていく)、結髪動作(手を後頭部にもっていく)、
服の着脱動作、洗顔動作など、日常生活で必要な動作が困難になります。
運動時の疼痛は肩に限らず首、背中、上腕にまでおよびます。

 

C圧痛。
肩周囲の軟部組織、とくに腱部や腱付着部、結節間溝部によく現れます。

 

 

五十肩の3病期

 

五十肩は発症から治癒まで多くは半年から1年かかりますが、3つの病期に分類されます。

 

@急性期:関節に起きている炎症が強く非常に痛みが強い時期です。
多くは発症から約1〜2か月ぐらいです。

 

この時期は、安静第一です。

 

無理に肩や手を動かさないようにして、重いものを持つなど痛みを誘発する運動や作業は極力控えましょう。
とはいえ全く動かさないと関節が拘縮して治癒してからも運動制限が残りますので、
軽い運動は発症してから4〜5日後くらいから始めましょう。

 

A慢性期:肩の痛みも急性期の刺すような痛みから鈍い痛みに変わります。
急性期のあと約1〜2か月ぐらいです。

 

夜も眠れるようになりますが、まだ腕を動かすと痛いし、運動制限もあるという状態です。
この時期は急性期より痛みが少なくなっていますので、少し積極的に肩の運動をしましょう。

 

右図は五十肩を改善するために行う運動で最も有名なコッドマン体操です。
別名アイロン体操といってアイロンを手にもって行います。
肩関節の力を抜いてアイロンの重みで軽く肩関節を引っ張りながらゆらゆらと動かします。

 

B回復期:痛みや不快感が徐々に少なくなり、手が動かしやすくなります。
慢性期のあと約3〜6ヶ月ぐらいです。

 

さらに積極的に毎日運動しましょう。
ここでがんばれば発症前と同じように肩を動かすことができます。

肩関節周囲炎の分類

肩の痛みを生じる原因は肩関節や関節周囲の軟部組織の病変から起こります。
それ以外に肩への分布神経の中枢側(頚椎や胸椎)の圧迫刺激も原因になります。

 

肩関節の病変には関節炎、変形性関節症、脱臼、捻挫があります。
慢性関節リウマチでも肩関節に炎症が起こることがあります。

 

広義の肩関節周囲炎は病変組織によって以下のように分類されます。
いわゆる五十肩は狭義の肩関節周囲炎と定義づけするのが一般的でした。
最近では肩関節に障害があってはっきりした診断名がつけられる場合は、
肩関節周囲炎から除外しています。
そのため、肩関節周囲炎という場合、一般的には五十肩のことを指すことが多いです。
整形外科学会のサイトを見てもそのような書き方をしています。
このあたりはけっこうあいまいで患者さんが混乱するところです。

 

広義の肩関節周囲炎の分類(従来の分類)
・烏口突起炎
・.上腕二頭筋長頭腱炎
・.肩峰下滑液包炎
・.腱板炎(変性性、外傷性、腱板不全断裂)
・.石灰沈着性腱板炎
・.関節上腕靭帯障害(不安定性肩関節)
・.いわゆる五十肩(疼痛性関節制動症)「狭義の肩関節周囲炎」
・.二次性肩関節拘縮
・肩結合織炎

 

 

広義の肩関節周囲炎以外にも肩が痛くなる疾患がまだあります。

 

・翼状肩甲(長胸神経麻痺)
・肩腱板断裂
などなど

五十肩 肩関節周囲炎の鍼灸施術

東洋医学的観点の場合
東洋医学的には加齢により気血の循環がだんだんと悪くなっているところへ
寒邪や湿邪が入り込み、経絡の流れが悪くなることにより痛みが生じます。

 

不通則痛(通じないと痛む)という考え方です。

 

患部を通る経絡上の反応点(循経取穴)や遠隔部位の反応点を取るとともに、
局所施術が大事になってきます。

 

ただし、急性期は局所に刺鍼すると炎症を強める恐れがあるためあまり触らず、
循経取穴をするか、手指のみに施術できる高麗手指鍼や井穴刺絡を用います。

 

条山といって下腿部にある条口穴から承山穴へ透刺しながら肩を運動させる施術方法や、
同じく下腿部の陽陵泉穴への運動鍼があります。

 


解剖学的観点の場合
五十肩で最も痛みが出やすい場所は腱板で、中でも棘上筋腱がターゲットになります。
次に上腕二頭筋長頭腱が上腕骨の結節間溝を通る所も多く発生します。

 

腱板を構成する筋(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)や
三角筋、上腕二頭筋などの支配神経は腕神経叢といって
頚椎(C5〜T1)の横から出て首の側面にある前・中斜角筋の間(斜角筋隙)を通ります。
ここは腕に血液を供給する鎖骨下動脈も通ります。

 

五十肩は高いところを見続けたり、逆にうつむいて下ばかり見るような姿勢を続けたり
首に負担がかかる動作をしたすることが原因で起こる場合が多く、多くの人は首の筋肉が凝っています。

 

そのような理由から腕神経叢の神経根や後頸部、
および前・中斜角筋などへの刺鍼も五十肩に欠かせない施術点です。

 

腕を動かすときは肩甲骨が大きく関与します。

 

そのため肩関節以外にも肩甲骨内側の肩甲挙筋や菱形筋、
前胸部の烏口突起に付着する烏口腕筋や小胸筋なども症状に応じて施術します。
胸郭部は肺があるので刺鍼せずに上腕部や挟脊穴を刺鍼することで施術できます。
肩甲骨と上腕骨をつなぐ大円筋も重要な施術ポイントです。

 

脱力できる姿勢を取って筋膜リリースをすると、それだけでも可動域が広がります。
さらに刺鍼をすることで間質液を巡らせて筋緊張を解き痛みが出ない状態を目指します。

 

 

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