かどた無双房鍼灸院

五臓六腑 腎A


マイケル・キーオン著「閃めく経絡」を基に腎について書いていきます。
この著書の中でも最も多くのページが割かれていることから分かるように
腎はとても重要な臓器です。

 

 

腎蔵精、精舎志
腎は精を蔵し、精は志を舎す
この一文は黄帝内経「霊枢」本神篇第八に書かれています。
腎は精を蔵しています。精神活動の志はこの精によるものです。
心臓は大動脈を通じてすべての臓器につながります。
腎臓とは中医学的に見ても、西洋医学的に見ても、非常に特別な関係があります。
腎臓と大動脈は同じ空間(腹膜後腔)にあります。
ここは少陰経の合流点を表します。
少陰経とは手の心経と足の腎経のことです。
氣は大動脈に沿って心から移動して上方に向かい腕と脳へと出ます。
下方で最初の大きな分岐は腎動脈です。
腎動脈から2本の短くて太い腕と手指のような血管が出ています。
これらの手指は心から下ってきた氣を保持する腎の機能を表しています。
これらの腕の先に2本の巨大な豆が位置します。
英語では腎臓のことをkidney beanキドニービーンと呼びます。

 

大動脈から腎動脈、腸骨動脈にいたる部位をイラストにすると「かかし」になります。

このイラストは本からスキャンしました。

 

血管の位置も相対的サイズも完璧に表すことができています。
・かかしの眼は横隔動脈(横隔膜を養う動脈)。口ひげは腹腔動脈(胃の動脈)。
・口は上腸間膜動脈
・乳頭は精巣動脈・卵巣動脈
・腕は腎動脈で、先にある5本の手指(分枝)で豆を保持する。
・おへそは下腸間膜動脈
・このかかしは男性なので陰茎があり、これにあたるのが仙骨動脈。2本の脚は腸骨動脈。
・その後ろ側ではかかしはロープ(腰動脈)で棒(脊柱)に括り付けられている。
このイラストは心と腎のつながりの強さを証明しています。

 

中医学における腎は臓器としての腎臓をはるかに超える存在です。
腎は精を貯蔵し、水分を支配し、骨を制御し、骨髄を満たし、脳と脊髄の生成に関与します。
腎は意志の力を動かすものと考えられ、体内における「恐怖の座」であって、人が適切にリスクを管理するのを助けています。
腎は性欲の基礎にもなっています。
腎陰と腎陽の相互作用で性的町道を動かします。
性欲が低下するのは年をとるにつれて腎のエネルギーが弱まるからです。
右側の腎は不思議な「生命の入り口」であり、とらえどころのない「命門」の場所です。
この命門の説明は「難経」の影響を受けたものですね。
命門の解釈はこれ以外にもありますが、ここでは著者の記述に従います。

 

 

 

副腎は腎臓がベレー帽をかぶったような位置と形をしています。
中医学には内分泌(ホルモン)系の概念がありません。
ホルモン系の機能は主要な臓器に結びつけています。
ホルモンは腺とよばれる細胞の小さな集まりで産生されるメッセンジャーです。
メッセンジャーは血液とともに身体のあらゆる所に行きます。
他の臓器に何をすべきか、スピードを上げろ、下げろ、などと命じます。
ホルモンのおかげで臓器間で瞬時に何をすべきか指示できるのです。

 

腎の場合、中医学が想定している腎の機能のほとんどを副腎が担っています。
副腎を英語で書くと adrenal glandです。
renalはラテン語で腎臓を意味します。
ad- は「付加」を意味します。
解剖学者がこれを副腎と名付けたのは、腎臓の上にのっていて腎筋膜(ゲロタ筋膜)で腎臓と一緒に覆われているからです。

 

鍼灸と発生学の観点からいえばこれは同じ氣を共有するので同じ臓器です。
副腎は腎筋膜だけでなく腎動脈、腎静脈への排液路も共有し、腎神経叢からの神経支配を受けています。
機能は形に従う。
腎臓と副腎は同じシステムの一部です。
副腎は腎臓のメッセンジャーシステムなのです。

 

副腎は身体で最高濃度の神経堤細胞誘導体を含んでいます。
副腎は外層の皮質と内層の髄質で構成されます。
神経堤細胞が入り込んでくるところが内層の髄質です。
髄質はアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンと呼ばれるホルモンを産生します。

 

 

副腎髄質ホルモン
副腎髄質はアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンと呼ばれるホルモンを産生します。
ドーパミンは意志の力を発揮するのに非常に重要です。
ちなみに麻薬常用者はドーパミン分泌が非常に少ないそうです。
中医学では腎が精を貯蔵するとされています。
これはこの腺が最高濃度の神経堤細胞誘導体を含んでいるからです。

 

英語で副腎のことをアドレナル・グランドといいますが、アドレナリンは副腎にちなんだネーミングです。
人がストレスを受けると副腎髄質からアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンは血液中を巡って「闘争・逃走反応」を起こします。
この反応は身体のあらゆる細胞に影響を及ぼします。
糖を取り込ませ、ミトコンドリアを過剰に動かして、代謝速度を上げます。
人は興奮し、注意し、行動する準備ができます。
これらの機能はすべて中医学が陽の性質と考えるものです。

 

アドレナリンは救急の薬剤としてよく使われています。
喘息とアナフィラキシーを治療できるだけでなく、出血と徐脈を止めることができます。
マイクログラムの単位のわずかな量を用いるだけで劇的な効果を発揮し患者を延命できます。

 

アドレナリンは細胞膜の外側(細胞の陽の側)に作用するホルモンです。
細胞膜は細胞内に何が出入りするかを決定します。
細胞膜を通るには3つの方法があります。
1:分解して通る〜アルコール
2:表面のゲートの1つで通してもらう〜コルチゾール
3:膜を通してメッセージを送る〜アドレナリン
アドレナリンは受容体に付着し、細胞の外側(陽)にとどまります。
アドレナリンは細胞内に決して入らずに外側で分解されます。
細胞の内側では、活性化された受容体が酵素のスイッチを入れて化学物質のカスケード反応、いわゆるセカンドメッセンジャ系を開始させます。
そして細胞の外側にあるゲートを開閉させてイオンや他の物質を出入りさせます。
あるいは、さらに多くの細胞内メッセンジャーを活性化・非活性化させます。
心臓や筋肉では、カルシウムを過剰に流入させて収縮力を増強させます。
肺では筋肉を弛緩させてより多くの空気が入るようにさせます。
脳では恐れと関連した情動反応を誘発させます。
陰陽の概念でいうとアドレナリンは効果においても性質においても陽です。
陽は外部的で、一時的なものであり、急速に活動的に作用します。

アドレナリンは細胞の外側で作用し、信じられないほど迅速で、その影響はわずかに数分から数時間です。

 

 

アドレナリンが腎陽ならば、腎陰に相当するのはコルチゾールです。
アドレナリンもコルチゾールも副腎から産生されますが、発生学的には非常に異なる部分から産生されます。
アドレナリンは神経堤細胞に由来する副腎髄質から生じます。
神経堤細胞は外側から移動してきて内側深くに定着するのです。
コルチゾールは副腎皮質から生じます。
副腎皮質は英語でいうと adrenal cortex アドレナル・コルテクス。
コルチゾールの名前はこれ由来です。
副腎皮質は発生学的に中胚葉(血の層)の派生物です。

 

コルチゾールとアドレナリンは多くの場合同じ病態で用いられます。
大きな違いとして、アドレナリンは急速な問題の修正のために用いられ、
コルチゾールはよりゆっくりと修正するために用いられます。

 

アナフィラキシーの時に両方とも用いられます。
アナフィラキシーのとき、免疫系は特定の物質が脅威であると決めて過剰反応して暴走状態に陥ります。
身体には感染症に対処する肥満細胞が備わっていますが、肥満細胞はこの事態に対処するために莫大なヒスタミンと他の刺激物を送り出して局所の環境を怒らせて敵対的にします。
アナフィラキシーではこれがあらゆる場所で生じます。
身体はかゆくなり、腫れて赤くなります。
呼吸はきつくなり、対処しないと呼吸困難で死ぬことさえあります。

 

このようなときにアドレナリンは素晴らしい治療効果がありますが、半減期が短く数時間で効果がなくなります。
効果が切れ始めるにつれてアナフィラキシーは治りきってないため戻ってきます。
これをアナフィラキシーのリバウンドといいます。
このためコルチゾールも投与されます。
アドレナリンが細胞の外側に付着するのに対して、コルチゾールは中心にある細胞核に取り入れられます。
アドレナリンはすでに存在するものに作用してタンパク質を活性化・非活性化させます。
コルチゾールは細胞核に新しいタンパク質、あるいは新しい細胞さえも作るように命じます。
アドレナリンは数秒で作用して数時間で徐々になくなっていきます。
コルチゾールは作用するのに数時間かかりますが、何日も作用し続けます。

 

コルチゾールの副作用は数年かかって現れます。
・体液貯留
・骨の弱体化(骨粗しょう症)
・筋肉が細る
・うつと精神医学的な症状
・高血糖(糖尿病)

 

アドレナリンの副作用はすぐに表れます。
・心臓発作のリスクなど

 

中医学の観点で言うと、コルチゾールは緊急事態に対処するために身体の陰の貯えを消耗させている、といえます。
通常はストレスが多い状況では、突発的なコルチゾールの使用は適切で健常です。
コルチゾールは身体の貯えを使うことで身体がストレスに対処できるように作用します。
コルチゾールは身体が必要とする場合に備えて体液(陰)を保持します。
不可欠な修復のために筋肉と骨からエネルギーと物質を引き出します。
その結果、筋肉はやせ細り骨粗しょう症になります。
また、血糖を増加させて十分に利用できるようにし、病原菌と戦えるように骨髄から白血球を放出させます。
しかしこのことで逆に白血球の攻撃性が低下してしまいます。

 

 

コルチゾールは腎陰の1つの側面であって腎陰そのものではありません。
腎臓の内部にはあまりに多くのホルモンがありすべてを説明するのは困難です。
そんななかでいくつかのホルモンをとりあげます。

 

 

腎主身之骨髄
「腎は身の骨髄を主る」
『素問』(痿論篇第四十四)

 

エリスロポエチンは主に腎臓が産生するホルモンです。
赤血球の産生を促進する造血因子の一つで、分子量は約34000、165個のアミノ酸から構成されています。
このためドーピングに手を出す競輪選手が選ぶ薬物として最もよく知られています。
腎臓が血液中で酸素濃度が低くなっていることを感知すると、強力かつ的確にエリスロポエチンが主に腎臓の尿細管間質細胞から放出されます。
腎臓は低酸素状態を赤血球が不足しているためだと解釈してエリスロポエチンを放出します。
血液中のエリスロポエチンは骨髄に移動します。ここで赤血球の産生を引き起こします。

 

 

腎主骨
「腎は骨を主る」
『素問』(宣明五気篇第二十三)

 

ビタミンDは、その産生に消化管、副甲状腺、皮膚、肝臓、腎臓が関わる複雑な必須栄養素です。
相互作用がとてもややこしく、骨に作用するころにはビタミンDとは呼ばれず、ホルモン活性を有する形のカルシトリオールと呼ばれます。
しかし、ビタミンDの変換の最後のポイントは腎臓です。
そして、骨の健康で最も重要なホルモン、カルシトリオール(ビタミンD)の濃度について最終的な決定権を持つのは腎臓です。
ビタミンD欠乏症はくる病として知られ、骨の成長不良を引き起こします。
腎臓はビタミンD代謝の最終段階を担うこのプロセスを制御します。
腎臓は骨の結晶を形成するカルシウムとリン代謝の維持にも関与します。

 

古代の中医学が腎臓と骨という2つの臓器を密接につなげたのは驚嘆すべきことです。
腎と骨は非常に密接であるため1つの臓器とみなすことができます。
骨は腎の強さの表れです。
中医学の医師は骨折しやすい人を腎で治そうとします。
中医学では腎は水に関連します。
腎が血液からの水をろ過しているため連想しやすいです。
腎が弱いと水は身体に蓄積します。
骨はこれと同じエネルギーによって制御されていると考えられています。
骨は溶液から凝結する生きた結晶です。
骨芽細胞(oeteoblast:ラテン語でosteoは骨 blastは建築者)はコラーゲン繊維の中にカルシウムとリンを過度に飽和させることで結晶を生じさせます。
これらの結晶が骨にその硬さと非圧縮性を与えます。
骨は密度の高い乾燥して死んでいるお墓の骨ではなく生きた結晶として考えると、骨と腎の関連性は非常に説得力があり自明であると思えてきます。
この結晶はビタミンD、カルシウム、リン、コルチゾールの濃度により、溶液から結晶化したり溶解したりします。
これらはすべ腎で制御されています。
そして結晶からなる骨は骨髄の中に魔法の物質を含んで保護しており、そこから血液が補充されます。
骨と腎は同じエネルギーを共有しています。

腎が病気にかかるとき、それが骨の慢性的な弱体化を引き起こしたり、骨粗しょう症を予防する薬剤が腎不全を予防したりするのはそのためです。

 

 

腎臓から生成される別のホルモンにレニンがあります。
レニンは存在する薬理学的製剤で最も成功した種類の1つ、ACE阻害薬を生み出したホルモンです。
非常に軽症の心疾患の人はACE阻害薬を服用している可能性が高いです。
ACEとは、Angiotensin Converting Enzyme(アンジオテンシン変換酵素)を表します。 Angio血管 tense緊張させる 
これは腎臓と心臓との間で重要な連絡を果たし、心臓にさらに働くように伝えます。
腎臓が十分な血液を得ていない、ということを心臓に伝えることを可能にしています。
腎臓で血圧が低下すると、ネフロンのわずかな領域にある細胞(緻密斑)はレニンを産生することで応答します。
レニンはACEを活性化する場所となる肺へ血液を巡って移動します。
これにより血管を緊張させるホルモンであるアンジオテンシンが生成され、心臓のポンプ機能をより強くします。
さらにアルドステロンと呼ばれる別の副腎皮質ホルモンを介して腎臓に水分を保持させます。
その結果、血圧が増加して腎臓は再び楽になると、レニン産生をやめます。
この連携が異常になると腎臓は心臓を鞭で打ち始めます。
心臓はさらに懸命に働くものの、腎臓はまだ楽になりません。
血圧は上昇し、心臓はより硬く、大きくなり、追加のストレスに打ち勝とうとします。
最終的に心臓は疲弊して壊れてしまい、心不全を発症します。

 

何千年も前の中国人は心と腎の間にあるこのつながりに気づいていました。
しかもこの心と腎のこのつながりを生命で最重要なものとしていました。
腎は精を貯蔵し、心は神(または霊性)を宿す。
腎水は心火を制御し、心火は腎水に活力を与えます。
何千年も前の中国人は当然ながら腎臓がレニンを産生することを知らなかったし、
レニンが肺内部で作用して別のホルモンを産生して心臓にストレスをかけることも、
これが副腎を介して腎臓にフィードバックされてより多くの水分を保持するように
伝えることも知らなかったはずなのにです。
代わりに、腎火という存在を考えつきました。
それは上方へと燃え上がり心臓に損傷を与える、命門のことです。
五行理論で腎と心は相克関係にあり、腎は心を抑制します。
心と肺は相克関係にあり、心が肺を抑制します。
腎臓はそのホルモンで心臓に大きく影響を及ぼしますが、
心臓も同じくらいの力で腎臓にフィードバックします。
心臓は主にポンプの力を通してフィードバックします。
心臓が産生して腎臓に影響するホルモンは少なくとも2つあります。

ANP(atrial natriuretic peptide 心房性ナトリウム利尿ペプチド)、
BNP(brain natriuretic peptide 脳性ナトリウム利尿ペプチド)
大動脈が間に入ったこのつながりは特別です。
血液を拍出する力は他の臓器にはみられない形で腎臓を刺激します。
心臓と腎臓の間で直接影響しあうホルモンは少なくとも7つあります。
アルファベット順に、
アドレナリン
アルドステロン
アンジオテンシン
心房性ナトリウム利尿ペプチド
脳性ナトリウム利尿ペプチド
ドーパミン
バソプレシン
中医学の理論では動脈を介した腎と心の特別な関係こそが
少陰経を形成することを教えています。

 

 

腎者牝藏也.地氣上者屬於腎.而生水液也.
「腎なる者は牝藏(ひんぞう)なり。地氣の上る者は腎に屬し、水液を生じるなり。」
『素問』(水熱穴論篇第六十一)

 

腎臓は多くのホルモンの源泉であるだけでなく血液をきれいにする能力が有名です。
腎臓は水溶性の毒を血液から除去します。
血液には細胞、たんぱく質、脂肪、水、など多くの小さいものでできています。
脂肪、細胞などは非水溶性でこれらは入ってきたときと同じ形で腎臓から出ていきます。
腎臓は血液の水分の部分を絞り、水といくつかのイオンしか含んでいない薄い尿を抽出します。
腎臓が素晴らしいのはこの尿の作り方です。
すべての良い部分を抽出して、イオンと酸の濃度を調整して、それから老廃物を除去します。健康であればこのプロセスで身体の内部環境は非常に正確なレベルに維持されます。
・pHは、正確に7.40に保たれる
・ナトリウムは140mmols/Lに保たれる
・カリウムは4.0mmols/Lに保たれる

 

このために腎臓には100万のネフロンが存在します。
ネフロンはそれぞれが小さいながらも知的なろ過システムです。
発生学的にいえば、ネフロンは中胚葉から生じます。
これは心臓と同じ場所からやってきたことを意味します。
腎臓のこのネフロン機能は素問が「水を主る」と呼ぶものです。
ネフロンはちょうどじゅうぶんな水分が身体にあるようにし、
その水分には体が必要とするだけのミネラルが含まれるようにしています。
ネフロンは水分内にあるすべてのを調整することによって制御を行い、
残りは浸透を行わせる。
身体の水は細かく調整された細胞の浴槽とみなすことができます。
身体がより多くの水を必要とする場合、ナトリウムを保持します。
これにより、浸透で水分を逆流させます。

 

骨にカルシウムが少なすぎれば腎臓はより多くのビタミンDを代謝しネフロンはすべてのカルシウムを再吸収します。
夜遅くまで起きていて、次の朝胃酸を抑えるアルカリ性の胃薬を飲んだら、接種した過剰なアルカリを尿で排出するのがネフロンです。
実際はネフロンは水分内にあるすべてを制御することで水分そのものを制御しています。水は身体の約65%を占めるだけでなく、本質的に陰の物質です。
そのため、腎のネフロン機能は陰エネルギーの基礎となります。
ネフロンと腎陰は区別できません。
ネフロンに損傷を与えることは腎陰に損傷を与えることと同じです。
ネフロンが機能しないと、水に溶解した物質を制御することができません。
そして浸透圧は腎から水をあふれさせます。
その結果、浮腫(水分の貯留)を発症します。

 

素問水熱穴論篇にこの結果が説明されています。
其本在腎其末在肺皆積水
「其の本は腎に在り。其の末は肺に在り。皆積水なり」

 

ネフロンにさらに仕事をさせるためにレニンが放出されます。
問題は、ネフロンがすでに損傷を受けていると機能しません。
水を制御する腎が弱ると体も弱くなり、皮膚は皺が寄り、
脳は頭蓋内で文字通り縮小します。

 

 

 

腎の神(志)は、意志力と生存本能を支配する 
在臓為腎…在志為恐
『素問』陰陽応象大論篇第五

 

腎はホルモンの源と体内の液体の制御者というだけでなく、恐怖が生じる最初の場所です。すべてのホルモンは感情的および心理的健康状態と深くつながります。
臓器から放出されるホルモンはほぼ普遍的に神経伝達物質としても機能します。
セロトニン serotonin は血管(sero-)を収縮(-tonin)させることが発見されたため、
このような名前がつきました。
今では抗うつ薬またはMDMA(エクスタシー)のような違法幻覚剤のいわゆる「幸せホルモン」として知られています。
神経伝達物質としてのヒスタミンは人をイライラさせますが、
より有名なのはアレルギー反応を引き起こす作用です。
ドーパミンの欠乏はパーキンソン病を引き起こす場合がありますが、
ほとんどのドーパミンは脳ではなく副腎にあります。
脳性ナトリウム利尿ペプチドは心臓と腎臓をつなげ、血圧を制御します。
しかし、これは最初に神経伝達物質として発見されたため「脳性」と付いています。
これらすべてのホルモンは複数の機能があるだけでなく、
ほとんどすべてが神経伝達物質としても作用することが現在では分かっています。
ホルモンは我々の脳の延長であり、脳と区別がつかないものです。
脳が終わり、身体が始まる地点は簡単には定義できません。
脳、脊髄、末梢神経は一つのつながりのようになっています。

そして末梢神経の末端は臓器の中に溶け込んでます。
この組織と神経の間の境目はぼんやりしています。
神経は臓器に何をすべきかを伝え、臓器は神経に影響するホルモンを産生します。
脳と身体、精神と身体の区別は我々人類が学問上の分類として生み出したものであり、
現実にはそのような区別はありません。
たとえばアドレナリン。
心臓を早く鼓動させるだけでなく、精神的に警戒させ、たやすく攻撃またはパニックへと駆り立てます。
闘争・逃走反応の間、身体にあるほとんどのアドレナリンは副腎髄質から生じています。
はたしてパニックの感情は脳にあるのでしょうか?
それとも体にあるのでしょうか?
閉所恐怖症の人が閉じ込められると感じてパニックになると、
神経系の暴走は汗をかかせ、動揺させ、心臓を早く鼓動させます。
これらは副腎髄質から産生されるアドレナリンから生じます。
多くの場合、これらの感情はどこからともなく現れます。
パニック発作では怖いと意識的に自覚することはありません。
問題がすべて頭の中にありと考えることは無神経かつ不正確です。

中医学では恐怖は腎によって生み出せれ、扱われる感情であるとされています。
ドーパミンというアドレナリンの同種のホルモンがあります。
ドーパミンはリスクに立ち向かい、意志力を調整する、脳において不可欠なホルモンです。麻薬常用者はドーパミンレベルが低く、衝動の制御を難しくさせています。
身体のドーパミンのほとんどは副腎髄質で作られています。

 

 

精成而脳髄生
精成りて脳髄生ず  
精から発育して脳髄を生じ
「景岳全書」張介賓 『霊枢』経脈篇第十

 

腎は骨を制御し、骨髄を満たし、恐怖が生じる場所です。
腎は少なくとも5つのホルモンを通じて心臓と情報交換をし、
中医学における腎のはたらきのすべてを行っています。
中医学では腎精は脳を満たすとしています。
これにより意識状態を清明に保っています。
神経堤細胞は血液脳関門やグリア細胞、シュワン細胞、星状神経、ミエリン鞘など脳の神経細胞の働きをサポートするパーツを作っています。
そしてこの神経堤細胞は精と同じものです。
だから脳と精はつながっています。
中医学では脳を特異な髄で満たされた骨であるとしています。
髄が腎によって制御されることで腎と精は密接につながっています。
腎不全が進むと脳がやせることがよく起こります。

 

 

腎氣盛…精氣溢寫…故能有子 
腎氣盛んにて…精氣溢れ出て…故に子をつくる能有す 
『素問』上古天真論篇第一

 

中医学では、射精するときにわずかな力である精を放出するとしています。
フランスではそれを le petit mort (小さな死)と呼び、
古代中国の道教学者はそれと同様に種を不必要に拡散することを慎むように言ってました。難経では精に腎の不思議な機能を当てはめて考えており、
右の腎は命門の住処であるとしました。
中医学の中でも不可解で異論があるところです。
命門は中国語で読むとming men ミン メン で、生命力の門を意味します。

 

「命」という漢字は、「口」と「令」のふたつの字からなる会意文字。
「令」は上部が冠の象形、下部は人がひざまずいている象形といわれています。
人がひざまずいて神意を聞くさまをかたどっており、そこから「言いつける」という意味になったのだそう。
もうひとつの要素である「口」は、顔にある口の象形といわれていましたが、
漢文学者の白川静博士によって、「サイ」という「神に捧げる祝詞を収める器」の形を示す文字、つまり呪具の象形という説も提唱されています。
「ひざまずいて神意をきく人」へ「祝詞を捧げる」意味合いを付したのか、「くち」を用いて言いつける意味合いを付したのか……文字の謎のひとつです。
「命」という漢字には神の命令という、有無を言わせぬ重さが含まれます。
人生に、ときに子孫誕生の喜びをもたらし、ときに病や事故、災害で無情に奪われる悲しみをもたらす。
人にはどうにもできない「命」の始まりと終わりに、古代の人は「神」からの「言いつけ」を感じ取ったのでしょうか。

 

命門にはいくつもの機能がありますが、その1つが性的エネルギーです。
腎臓は副腎を通して性的エネルギーと密接に関連します。
副腎皮質は思春期に性ホルモン(テストステロン、エストロゲン)を放出し始めます。
これは成年期まで続きます。
発生学的には卵巣と精巣は初期発生の腎臓から派生します。
精巣動脈と卵巣動脈は腎臓のそばから始まっているのはそのためです。
古代中国の腎臓が性欲と生殖を支配する、という解釈は正しかったことを示しています。
これで腎が単なるろ過システム以上の存在であることが分かります。
身体の水分を管理し、健常な骨と髄と血液の生成に関与するする臓器です。
興奮(アドレナリン)や休息の量を制御し、ドーパミンという形で意志の力を貯蔵します。
私たちの身体で中心的な働きをする複数のホルモンを通して、下にある腎は上にある心とともにダイナミックに動く枢軸を形成しています。
さらに性ホルモンの陰と陽を生み出し、腰部に次世代を貯蔵しています。

 

 

形状と機能が関連しているという考え方が中国文化にはあります。
生命の種とみなされる腎臓は2粒の種や豆にたとえられます。
2粒の種は脊柱の両側に位置し、根の代わりとなる排水管が下方に配水し、
情報に伸びる共通の茎を有しているように見えます。
精巣も2粒の種と形やふるまいが似ており、初期発生の腎臓から派生します。
中国では長い間クルミの形が脳に似ているので、
健常な脳機能のために食べられてきました。
現在では、クルミに含まれるオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸が脳機能に必須であるということが科学的に証明されています。
クルミは精巣機能にも非常に良く、精子の細胞膜にはオメガ3脂肪酸が必要で、これにより力強い精子を作ることができます。

 

 

人が生をうけるとき、まず精ができ、精から脳髄を生じる 
人始生、先成精、精成而脳髄生 
『霊枢』経脈篇第十

 

張介賓はこれについてこう述べています。
精とは人の水のこと。
万物が生じるそのはじめはすべて水である。
だから人の生まれ始めはまず精ができる。
精は腎に臓されており、腎は脳に通じている。脳は陰である。髄は骨を充たすもの、諸髄はすべて脳に属す。
だから精ができたあとに脳髄が生じる。

 

発生学的に言うと、腎臓の発生はすべての臓器で最も特異なものの1つです。
前腎とよばれる最初に出現する腎臓は胚が非常に小さく臓器がなく、
身体がヒトよりもイモムシに似ている段階で現れます。
この原始的腎臓は細胞からの過剰な廃液を排出して卵黄嚢に戻しています。
この前腎は心臓よりも2日前に生じます。
この時期での2日間は非常に大きな変化をするときなので、非常に長い時間差です。
この前腎は中医学が言う腎の機能を示しています。
腎は腎臓を超える存在です。
脳、骨髄、骨、副腎、精巣はすべて中医学における腎の一部です。
前腎はのちに頚部となる原始的背部に沿った左右2本の線として現れます。
中期にあたり中腎は小さくても機能する腎臓が並んでおり、
これら左右2本の線に続きます。
これらの中腎はあとで膀胱になる場所に排液し、
最後の腎臓ができるまで腎臓の機能を持ちます。
そしてようやく後腎が生じます。
後腎は中腎の膀胱の端から生じて周囲の細胞を誘導して最終形態の腎臓を形成します。

中腎は膀胱を形成し、後腎は大人の腎臓を形成します。
中腎は男性では精巣とそれに付随する管を形成します。
精巣は腎臓と同じ場所から生じます。
そのため精巣がずっと下の陰嚢まで動脈を引っ張っていきます。
尿管の痛みはたいてい腰部から鼠径部、睾丸にかけて感じられます。
この痛みは発生によって定められたファシアの通路に従っています。
これらの組織はすべて1つのファシア面に沿って位置しています。
このファシア面は尿管で始まり、前立腺を覆う膜につながり、精管から睾丸で終わる。
腎臓の集合管が発生する反対側で起きる痛みは別のファシアに属するのでこの通路に従うことはありません。
代わりに腰部の後ろ側で漠然とした痛みにとどまります。
尿管の痛みがこれほど広がるのは非常に激しいからです。
後腎が形成されるときに形成中心が生まれ、どこで泊るかを後腎に命じます。
形成中心は通路を通ってそのメッセージを伝え、これらの通路は成人ではファシアとして存続します。
ファシアは文字通りに、そして発生学的に臓器の姿を定めます。
腎筋膜(ゲロタ筋膜)は腎臓を包み、後腹膜を通じて心まで行き、
肝臓の無漿膜野にまで続き、骨盤内臓器のほうに流れ落ちます。

これは腎経の流れと同じです。
腎臓、副腎、血管は腎筋膜が覆う腎周囲腔に含まれています。
ファシア上は氣、水、空気、血液も流れます。
肝臓の無漿膜野へと至る情報へのつながりは中医学で肝と腎が特別なつながりを持つ理由の1つです。
他の理由は腎氣が腹膜の骨盤側に流れ、肝氣は腹膜側に流れるためです。
下方へのつながりは骨盤内の臓器である膀胱、膣、直腸にまでいきます。
骨盤に流れる血液・氣はすべての臓器を覆いますが、それらの臓器には入りません。
骨盤内の臓器に対する腎の力学は下焦を共有することで反映されます。
氣は圧の高い所から低い所へと流れ続けます。
氣は骨盤の出口を必要とします。
骨盤の唯一の出口である閉鎖孔と呼ばれる小さな穴を通ります。
閉鎖孔は腎経の脚の付け根の場所と同じです。
大腿の閉鎖孔からの通路は筋肉の筋膜面を通ります。
内転筋、半膜様筋、腓腹筋、アキレス腱、後脛骨筋、足裏の深部筋肉。
身体の前面で少陰経は正中臍索(臍動脈のなごり)として続きます。

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